パワーアンプで重要な部分の一つに電源部があります。電源で音質が驚くほど変わります。電源について解説します。

電力会社から供給される電源は商用電源とも呼ばれ、一般的には電力会社から対地電圧100V、50Hzまたは60Hzの交流で供給されています。アンプは直流で動作しますので、アンプ内の電源部で直流に変換します。
アンプで使用する直流変換には、アナログトランス式、スイッチング式が有ります。
アナログ式はトランスの作用で電圧変換を行い50Hzまたは60Hzの周波数のまま低電圧に変換して整流、平滑などの回路を使って直流を作り出します。アナログ式は商用電源の低周波数のまま電圧変換を行いのますので、トランスが大型化してしまう上、変換効率も悪く重量も重くなリます。
スイッチング式は商用電源周波数より高い周波数でスイッチングすることによりトランスが小さくなりスイッチングのタイミングを変化させることで所定の直流電圧を得ます。コンパクト、軽量になる反面スイッチングノイズが音質面に影響することがあります。

エルサウンドのパワーアンプは磁束漏れの少ないトロイダルトランスを採用したアナログ式で直流化しています。 パワーアンプの電源回路は、一部の商品を除いて整流回路、平滑回路、安定化回路がオプションで選択が可能となっています。

選べる電源オプション

スタンダード

ショットキーダイオードで整流を行う非安定化電源です。安価に製作可能です。

Sicダイオード

Sicショットキーダイオードで整流を行う非安定化電源です。
ダイオードのスイッチング時に生じる逆回復時間が基本的に存在しないため、ノイズ発生が抑えられた回路です。

Sic出川式電源

出川氏が発明した整流平滑回路をSicショットキーダイオードで構成したものです。 非安定化電源ですが透明度の高いクリアな音質が特徴です。
デメリットとして出力が少し下がります。

Sic安定化整流

Sicショットキーダイオードで整流を行った後、リプルや負荷変動による電圧変動をあらかじめ吸収した安定した電圧を供給します。
低音域の応答性が良くなり透明感もアップします。駆動能力がアップするためウーハーの逆起電力の影響も大きくなることからC.P.M.回路も併せて搭載します。
デメリットとして出力が少し下がります。


ダイオード整流

ダイオード整流

トランスで 100V 交流電圧からアンプの供給する電圧まで変換します。交流は時間に応じて電圧、極性が変化します。(電流は電圧と負荷により変化します)
整流とはダイオードの向きにより波形の上下のいずれかをカットし、一方向の電圧変化だけの波形を作り出すことを言います。
この図は0を境界に-側がカットされたダイオード1個で整流した半波整流波形です。
ほかにトランス中間タップを用いた全波整流、ダイオードブリッジを用いた全波整流回路などがあります。

Sicダイオードの効果

Sicダイオードの効果

一般的な整流ダイオードの場合、順方向から逆方向に切り替わる瞬間(赤い部分ONからOFFに切り替わる瞬間)に大きな過渡電流が流れます。この過渡電流はノイズとなり音に影響を与えます。
Sicダイオードは、この過渡電流が原理的に発生しないためノイズを押さえたクリアな音が得られます。
しかし順方向電圧が高くなりますので、一般的なダイオードに比べると効率が落ち、アンプの出力が少し下がります。

直流化(平滑回路)

直流化(平滑回路)

コンデンサの充放電特性を利用して直流化します。ダイオードで整流した後、コンデンサに充電します。電圧のピークを過ぎればコンデンサから放電して直流化します。この充放電で生じる電圧この脈打った部分をリプルと呼びます。
リプルは音質を劣化させますので全波整流回路やトランスの容量、コンデンサの容量などを最適化することで、リプルの発生をできるだけ少なくします。通常の整流回路も出川式もトランスとコンデンサの容量が同じなら固定抵抗などの静的な負荷においてリプルのレベルほぼ同じです。
出川式では整流回路と平滑回路に工夫が加えられた整流平滑回路となっています。
音楽再生などの動的に変化する負荷において、リプル波形が負荷状況に応じて変化し、リプルを構成する周波数成分、エネルギーが変化し結果的に澄んだ解像度の高い再生音になります。

安定化整流

安定化整流

通常の電源回路も出川式電源回路も平滑時のリプルを含んだ直流となっています。
またリプルに加え非安定であるため左の波形のように音量(オレンジの波形)に応じて出力電圧が変化します。音楽再生において特に低音部は電圧変動に伴い締まりのない感じに聞こえ、リプルは小音量の際のいわゆる透明感に影響します。
非安定化電源回路では電圧変動を出力電流の大きいトランスと大容量のコンデンサを使用することでできるだけ抑える様にしていますが十分ではありません。
安定化整流回路では破線以上の電圧を使用せず一定電圧を出力します。正確には電圧変動は残らないわけではありませんが、非安定回路の比ではありません。安定化整流回路は一定電圧を供給するだけで負荷状態を基に出力電圧の補正は行いません。これは出力電圧の補正時に発生するノイズが再生音を濁すためです。
安定化整流と呼んでいますが、無帰還安定化回路と呼ぶ方がより正確です。
上の図は+側電源部の挙動を解説していますが、-側の電源部も同様です。

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